他の九つの蔵は、畜物語という森の中に立つ個々の掟を記す。畜物語だけは掟ではない。設計学でいう森(全体=十四式の家、世界・掟・共有の臓器)そのものを、規則の形に切り分ける前の一つの姿のまま留めておく本である。
ここにはまだ、巻が一つも無い。
それはこの本が未完成だからではなく、森がまだそのままの姿でいる、ということ。
正論蒔宿と対話するうちに、畜物語という森の輪郭が一つ見えたとき、ここに巻として記す。急いで埋める場所ではない。
畜物語は「答えを先取りする」書ではない。他の九つの蔵が言葉にできた規則を運ぶのに対し、この本はまだ規則になる前の、森そのものの姿を待つ。空であることが、いまのこの本の正しい姿である。